作家 額賀 澪(ぬかが みお)さん 講演会 東京・学校図書館スタンプラリー実行委員会 |
2016年10月22日(土)、目黒駅に近い日出中学校・高等学校図書館で作家の額賀澪さんをお迎えし、講演と参加者による対談を行いました。 参加者は、中学生1名、高校生7名、司書&司書教諭12名、教員2名、元教員1名で合計23名でした。 会場は、少ない人数ながらも参加中高生のパワーが充満して、 活気ある講演会でした。 中高生の質問にも丁寧にお答えいただいた作家の額賀さん、 本当にありがとうございました。 また、額賀さんを紹介いただいた町田総合高校の長崎先生、会場校の日出中学校・高等学校図書館の谷口さん、司会の都立国分寺高校司書の杉山さん、本当にありがとうございます。皆さんのおかげで無事終了できました。 また、こういう機会がありましたら実行したいと思います。
(都立町田総合高校 丸岡準治) |
〜 参加生徒たちの感想 〜 |
拝啓 遅い秋もようやく深まって参りましたが、お変わりなくお過ごしのことと存じます。 さて、先日の講演会では、貴重なお話をいただき、ありがとうございました。 私は今回が作家さんの講演会というものに初めて参加したのですが、制作する側の視点からお話を頂くという体験をさせていただき、作品を制作する上でのロジックなどの普段では聞くことのできないような貴重なお話をお聞きすることが出来大変有意義な時間を過ごすことができました。 今回得たことを今後の委員会活動で活かすことができたら良いなと思っております。 重ね重ねにはなりますが、先日は本当に貴重なお話をいただき、ありがとうございました。 これから寒い季節に向かいますが、お体にお気をつけてお過ごしください。 これからも一層のご活躍を期待しております。
敬 具 東京都立稔ヶ丘高等学校2年 崎玉 円 額賀 澪 様 |
作品の文面は作者の性格が出ているのだなと思いました。 また、意外なところで、作家同士がつながっているという話がおもしろかったです。 (日出高等学校2年 H) |
額賀先生の性格の明るさもあって、あっという間の時間だった。 小説を書き始めた原点や作家を目指した理由を聞くこともできた。 『タスキメシ』を読んで、そこに描かれている兄弟の葛藤の着想は一体どこから来たのかを質問したところ、 「自分の弟がライバル作家だとして、と考えてみた」との答えに驚いた。 小説を書くため、プロットを作るメリットや文学賞には必ず挑戦した方がいいというアドバイスももらえた。 講演会の後も、他校の図書委員と額賀先生の話が出来たのも楽しかった。 (田園調布学園中等部2年 O) |
これも、今は昔。 私が初めて彼女に出会った場所は、居間でした。 「王様のブランチ」というテレビ番組で新人賞をダブル受賞というキャッチコピーでインタビューを受けている若い女性の姿がありました。 その時の私は「可愛い顔しているなー」と思いながら、かっぱえびせん片手に、パリパリサクサク彼女のインタビューを聞いていました。王様のブランチはあまり覚えていませんが、楽しみながら観ていたように思います。 ただ、額賀先生は引き出しが多いから、自由に喋らせた方が輝くタイプの女性だな、と思いました。 さて、その数年後、2016年10月22日(土)に彼女と初対面するチャンスに恵まれました。 そのとき定時制の私は四年次。卒業を控えていました。 受験生?知ったことか!どうせ浪人だー! 心の中の天使と悪魔が特に争うことはなく、二つ返事で司書の先生に「行きます!」と答えました。 さて、参加をするには額賀先生の本を事前に読んでいなければいけません。 私は「ヒトリコ」を選んで読みました。 ずっしりと重たく、読み応えがあるけれど、サクサク読めます。読むのがやめられない止まらない。 彼女の文章はしっかりしていて、淡いものは全く感じない。 淡く詩的な文章の作家が、乙一や梨屋アリエだとすると、重松清、宮下奈都タイプでしょう。 ただ、誰かに似ている話を書ける人というわけではありません。額賀澪先生の「ヒトリコ」は確かに、額賀澪先生にしか書けないものでした。 ひとりぼっちを強いられて、ヒロインが強い心と優しさで、お友達と仲直りをするわけでもなく、虐めていた人たちが改心するわけでもなく、明るかったヒロインが苦しまないわけでも、性格が歪んだりトラウマが残ったりしないわけでもありません。 立ち向かうよりは虐められたまま相手を無視した方が楽だし、環境を良くしようと行動を起こすよりは、自分の心持ちを変えた方が現実的。 現実で似たような思いをしている読者にとって、こういう物語の展開が一番癒されるのではないでしょうか。 虐められている自分を癒すために、このような話を読んでも、主人公みたいに勇気を出せない自分はダメだ、とか、虐めっ子が改心しない現実は非情だ、とか、なんだかんだ、共感できないまま追いつめられることは多いもの。 ヒロインのように無理せず「ほどほどに頑張った結果」、少し優しい気持ちになれる展開に、学校があまり楽しくなかった私は救われました。 「ヒトリコ」という作品を読んでから額賀澪先生に、本当に訊きたいことがありました。 講演会の日を指折り数えて待ち、額賀澪先生の話を聞く日がやってきました。 出会った彼女はイメージと完全に違っていました。 質問したいことがあるとはいえ、作家にプライバシーを持ち込んだ質問をしてはたして失礼にならないかという不安を彼女は一気に消しました。 額賀澪先生はどちらかといえば庶民的で、ざっくばらんと喋り親しみやすい人でした。 それでも大阪のおばちゃんみたいな感じではなくて、人が嫌がるような発言はせず、優しく真面目で可愛らしい人でした。 作家の講演会なのだから高尚なことばかり話すのを想像していたのですが、どちらかというと俗っぽい人の感情まで語ってくれてひどく親近感を覚えたように思います。 産まれてから今までの色々なエピソードを話してくれました。 自分が衝撃を受けたのは「ハリー・ポッター」シリーズで、それをきっかけに本を読むようになった、自分はポケモン世代で、など。 親よりは年下、でも私よりは年上、社会の中ではまだまだ若者。額賀先生はあまり関わることのない世代でした(私の母の彼氏と同じ世代だけれども……)。 そんな近いけれど、案外一番遠いかもしれない世代の人の話は、共感できて、でも新しく「知る」部分がありました。 生徒と額賀先生の距離は近く、生徒が時折相槌を打っても、先生は嫌な顔一つせず言葉を返してくれる。時々こちらに質問をすることさえある。 「全員参加型講演会」を経験したのは初めてでした。 私はそんな雰囲気の中、全く緊張せずに質問をすることができました。 「私は人間関係が上手くいっている時はきれいで感動的な小説が書けるけれど、虐められたり世の中を恨んだりすると厭世的な小説になってしまいます。想像の世界で小説を書くことはあるけれど、本当に自分の中にない気持ち、いわゆるそういう意味での嘘はつけないんです。それですごく困っています。ヒトリコは表立って虐められてはいないけれど、感覚的に虐められている気持ちだったと思います。でも最後は爽やかなハッピーエンドでした。先生はヒトリコを書いている時、世の中は素晴らしいと思っていましたか?」 すると、額賀先生はこう答えてくれました。 「中高生の時にヒトリコを書いていたら、もっと別の話になっていたと思う。 ヒトリコを書いている時は、まだ作家になれておらず、地震の直後だったから就職も決まらず、辛かった。だから最初は暗い。でも小さな賞を受賞してすごく嬉しかったのと、就職が決まったことでどんどん明るい気持ちになった。だから最後の方は明るい印象になった。だからやっぱり、私も自分の環境や気持ちに左右される。ただ、数年後、あなたがもっと幸せになって反対に幸せな話しか書けないかもしれない。そう考えると今のうちに今しか書けない話を書いてもいいかもしれない」 ああ、やっぱり質問してよかったなあ、と思いました。 綺麗な話でほめられてばかりいたので、綺麗な小説が書けないと焦っていましたが、私は今厭世的な話を書けるんだ、と思いなおすことに決めました。 面白い話はどのジャンルでも面白い。 バットエンドでも、ハッピーエンドでも、厭世的でも、優しくても、爽やかでも、心にグサグサ刺さってきても、面白ければ大丈夫。そう思えました。 強いて言うなら、意味のある厭世、意味のあるバッドエンドにしたいとは思うけれど。 その後、サインやツーショット写真など様々なプレゼントを頂き終了となりました。 お忙しい中予定よりも長い時間をとっていただいて、貴重な経験をできました。 ありがとうございました。 (都立稔ヶ丘高校・上釜葉月) |
作家 額賀澪さん 作品紹介 |
|
© 2012 東京・学校図書館スタンプラリー実行委員会 |